前回は、確実に筋肉を増やす為のカロリーの話を中心とした記事を書きました。今回は、トレーニングのボリュームと頻度について取り扱っていこうと思います。
トレーニングをいざ始めるとなった時に疑問に思う事の1つとして、「どの位の量をどの位の頻度でやればいいの?」という問題がありますよね。これを正しく判断するには、まず筋肉の発達のメカニズムついて軽くおさえておく必要があるかと思います。
筋肉の発達は、ストレスに対する適応現象である
僕らの身体は、外部から正常な生命活動を脅かす物事に出くわすと、それに適応しようとします。筋肉にトレーニングの刺激というストレスがかかったのを身体が認識すると、「このままじゃヤバいよー!筋肉増やしてー!」というシグナルが発信されます。ここで面白いのが、このシグナルが"発信された時点"で、筋合成のスイッチがオンになります。
どういう事かと言うと、現在の筋肉の能力を少しでも超える刺激を加えればその後どれだけトレーニングしても効果は変わらないのです!
この理論を提唱するボディビル界のレジェンド山本義徳氏いわく、
電灯をつけるときのことを考えてみましょう。スイッチを一回押せば、それで電気は点きます。これが“メッセージが伝わった”ということ。 200の刺激を与えるというのは、スイッチを強く押す、あるいはスイッチを押しつづける、ということであり、どちらも全く意味がないのです。身体にとって「これはストレスだ」と判断されれば、それで十分なのです。
とのこと。過度なトレーニングはコルチゾールレベルを激しく上昇させることで逆に筋肉が減ったり、怪我をしたり、免疫力が下がり体調を崩しやすくなったりと良いことが全くありません(オーバーワークというやつですね)。
2016年の論文では、筋ダメージの大きさに応じて筋タンパク合成が強くなるわけではないという事が報告されています。
目安として、トレーニングの翌日に軽い筋肉痛がきていれば十分な刺激を与えられていると判断していいとのこと。逆に何日も筋肉痛が続いている場合は、刺激が強すぎます。ハードなトレーニングは達成感や満足感は得られるものの、筋肉を効率的に得る事は出来ません。
トレーニング後に僕らの身体に起こる変化
トレーニングが終わり、身体が刺激に適応すべくシグナルを送ると、筋タンパク合成が始まります。これはトレーニング終了後約48時間にわたり続くので、この間にトレーニングをするのは意味がありません。
また、トレーニングの刺激は筋肉の発達を阻害するミオスタチンというホルモンを抑制します。この効果は50時間を過ぎた段階でも継続することが確認されています。
さらに、ハードな運動やトレーニングの後は筋肉を分解するコルチゾールというホルモンが増加し、ラグビーの試合終了後の選手の血液検査を行ったところ、60時間後までその作用は続いたとの事。
ベストな頻度は各部位週2〜3回
これらの事から考えると、同じ部位のトレーニングは少なくとも3日の間隔を空けて行うのがいいでしょう。
実際の最適なトレーニング頻度について、140件もの研究を調べてまとめたメタ分析では、
・トレーニング未経験者は各部位週3回、経験者は各部位週2回がベスト!
という結論を出しています。トレーニング未経験者はトレーニング強度が低く、コルチゾールの悪影響も少ないのが理由。正しいフォームの習得にはある程度数をこなす必要もあるのでちょうどいいですね。
ビギナーにありがちなのが、一流のボディビルダーのトレーニングをそのまま採用し、細かく分割して各部位週1回しか刺激を加えられないメニューを組んでしまっている、というケース。週に各部位1回の刺激では少なすぎる上に、トレーニング強度も低いためこれでは効率が悪過ぎます。
2016年に発表された、質の高い研究データを偏りなくまとめたシステマティックレビューによれば、
・週2回のトレーニングは週1回よりも明らかに効果が高い!
・週3回のトレーニングが週2回よりも効果があるかは、分かんない!
という結論を出しています。「あれ!?初心者は週3回がベストって言うたやん!?」とお思いかと思いますが(笑)、ビギナーと経験者の扱う重量は大きく異なります。200kgのバーベルを週に3回何度も持ち上げるのはいくら適応しているとはいえ明らかに身体の負担が大きいですよね?
セット数はどれだけ追い込むか、で決めよう
最適なセット数に関しては議論が分かれるところですが、2017年10月のレビュー論文では、
トレーニング未経験者にとって上半身の発達において 3セット以上行うことは、 2セット以下と比較して効果があるわけではない。トレーニング経験者にとっても 3セット以上が明らかに効果的だとは言えない。
と結論付けています。またサウサンプトン・ソレント大学の研究によれば、
8〜12レップスで限界までを1セットとして、週に1、2回で十分な効果が出る!
とのこと。これらの事から、少なくとも1種目3セット以上行うのはあまり効率的ではないと言えそうです。
とはいえ、さすがに1セットじゃ少な過ぎでしょ!と思いますよね?同感です。笑
1セットで十分なのは、限界まで追い込めれば、の話。よく人間の身体は普段リミッターがかかっていて、緊急事態の時だけそれが外れて100%の力を出し切ることができる、という話を聞きますよね。いわゆる火事場の馬鹿力というやつ。心理的限界は肉体的限界のだいぶ手前に設定されています。
そのため追い込む前提でセットを組む場合、心理的限界を感じるレップスで2セットが最適である、と言えます。
ただし、ビギナーがいきなり心理的限界まで追い込もうとすると、代償動作といって酷使している筋肉をかばうようなフォームになる事で別の筋肉を使ってしまい、追い込みきれない事が多いです。まずは限界の80%程度までにとどめながら正しいフォームを獲得しましょう。その際は3〜4セットほどに設定すれば十分な刺激を与えられます。
参考までに、最後に僕の1週間のトレーニング計画を書いて終わりにしたいと思います。セット数は部位毎に2セット。鍛えたい部位を、
1:胸と背中
2:三角筋中部と腕
3:三角筋前後部と脚
の3分割にして、
1→2→休→3→休→1→2→休→3→休→1
というようなサイクルで組んでいます。こうすれば、どの部位も中4日で次の刺激が入りますよね?
初心者の方はもっとシンプルに、ベンチプレスやスクワット、懸垂などの様々な筋肉を効率よく刺激できるコンパウンド種目を週2〜3回の頻度で行うのがオススメです。怪我をしては元も子もないので、youtubeなどでフォームを勉強し確立するのを最優先で。
まとめ
・筋合成のシグナルはスイッチ式!身体がトレーニングによるストレスを認識する分の筋トレでOK!
・初心者は週3、経験者は週2の頻度がベスト!これはトレーニング自体が、と言うことではなく発達させたい部位毎の頻度ね!
・セット数は追い込むなら2セット、追い込まないなら3〜4セットがオススメ!
・初心者は一度のトレーニングで全身を刺激して週3回が良さそうだよ!
良かったら参考にしてみてください、それでは!